平成十九年大相撲名古屋場所千秋楽(後編)


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東 方

西 方


先ほどの一番が『同い年対決(ともに昭和46年度生まれ)』ならば、
この一番は、『春日対決』。ハァ?いや、玉春日−春日王戦なわけで
あります。漢字で書くと、思わず『両端左右対照』に見えてしまいます
よね。春日王が、漢字だけ『春日玉』になっても、別にいいかも。
『蔵玉錦』と書いて、『ざおうにしき』と呼んでいた四股名の力士も
かつていたのだから。・・・・って、人の四股名で勝手に遊んで、どうも
すみませんm(__)m。失礼しました(汗)。この一番は、7勝7敗対決
だったのですが、ベテラン玉春日が勝って、土佐ノ海に続いて
勝ち越しを決めました。ベテラン元気。

気合い十分で突きまくるこちらは、やはりベテランの皇司と、若手の
黒海の対戦。この場所、番付運の好さに助けられて幕内に留まった
皇司も、そのツキを生かすことは出来ませんでした。負け越して、
翌場所は十両です。一方、小結で勝ち越したことのある黒海も、
この場所はここまで5連敗中と、精彩を欠いていましたね。



勝負は黒海が体力勝ちしました。連敗を5で止めて6勝目。
一方の皇司も6勝9敗となってこの場所を終えました。

取り組み進んで、こちらは豊ノ島ー玉乃島戦。勝ったのが
小兵、豊ノ島です。この寄り身は、かつての差し身の名人、逆鉾を
思わせるものがありますね。3勝8敗から4連勝で7勝にまでこぎ
つけたのは見事でした。そしてこの翌場所では、横綱・白鵬に堂々と
攻め勝ち、殊勲賞に輝いたのでした。



『出る出る出島』が出足鋭く、若の里を破りました。大関−関脇として
対戦するのが当たり前だったこの2人。この位置では寂しい。

勝ち名乗りを受ける出島。この場所は負けが込み、これが
5日ぶり5個目の白星となりました。



豪風−琴奨菊戦です。2場所連続三役で一点負け越しの
翌場所となったこの名古屋、琴奨菊は5勝10敗の大負けでした。

「あーっ!イカンなー!」と、無念さ一杯の表情の琴奨菊。
琴光喜が大関昇進を決め、部屋は上昇気流。
琴奨菊も乗り遅れたくはないところ。拡大版はこちら



雅山−安美錦の一番。安美錦が、雅山の首の下に潜り込み、一方の
雅山はやや半身の体勢。去年のこの名古屋では、大関復帰をかけ
ていた雅山でした。そして今年、大関を見事決めた琴光喜が、この時、
控えに入っていました。いよいよ大一番が近付きます・・・・・。

曲者に苦しめられた雅山でしたが、最後は振りほどいて
体(たい)を開き、突き落として勝ち。力が入りました。



毎度おなじみ、目を剥いて牙を研いで(それはないか)気合入れ
をする、『平成の名物』高見盛。館内からは笑の渦。本人は真剣。

だが、勝負は腰が伸びて完敗。相手は売り出し中の時天空でした。
この場所の高見盛は全く振るわず、3勝12敗。前場所の勝ち越しで、
興奮して力を使い果たしてしまっていたのか・・・・・?



さあ、いよいよ来ました。平成19年名古屋場所、最大の一番と言っても
良いでしょう、13勝1敗の琴光喜が土俵上です。勝てば少なくとも優勝
決定戦となり、負ければこの後1敗の朝青龍が勝てば優勝は無くなり
ます。ご当所で大関を決め、更に千秋楽まで優勝争いの先頭というの
は、本人は元より、ファンの人たちにとっても、願ってもない巡り合わせ
だった事でしょう。かつて一度ご当所で(大関盗り)失敗しているだけに、
まさに今度こそはという心境で望んだ琴光喜の15日間、今度こそ
ファンに恩返しが出来ました。あとはとにかく優勝。この場所、
琴光喜には不退転の決意が感じられました。人間が変わりました。
これまでの様々な思いを、なりふり構わずぶつけていたと思います。
そんな気迫が、大関盗りを成功させました。長い大相撲の歴史の
中でも、ご当所で2度も昇進挑戦のチャンスに恵まれた力士は、
そうはいないのではないでしょうか?拡大版はこちら

いよいよ制限時間一杯です。地元で昇進を決め、優勝をかける
ことが、ここまで人を熱くさせるとは!と、感じずにいられなかった
瞬間。先ほど述べた黄色い垂れ幕が激しく揺れています。
熱気は沸点を極めたというところ。一人の男に、地元の思いを
託す視線が釘付けになっています。



『双方手を下ろして。待ったなし!』いざ立ち合いです。
琴光喜、今改めて不退転。負けられません。

あーっ!!琴光喜敗れたー!!これは何と!館内悲鳴の嵐。
琴光喜がもろくも土俵に転がってしまいました。立ち合いから自分の
組み手に持ち込めないチグハグな動きでしたが、やはりプレッシャー
だったのでしょうか?この瞬間の本人の胸中やいかに?しかし
館内はすごい状況でした。ショックの叫びの雨あられ。私の席の
前方で観ていた琴光喜の家族・親族の人たちも、「ガクッ・・・・・」。
お互い、かける言葉も失っていたことでしょう。茫然自失とはまさに
この事。背中からでも、その心中が伝わってきました。琴光喜、
大きな1敗。しかしそれにつけても、この状況の中で、琴光喜に対し、
ヒール役になり切れる対戦相手の度胸のスゴさも、また印象に残り
ました。その相手とは、稀勢の里です。あの気の強い、気迫を前面に
出すタイプのこの若手は、一切物怖じせずに、落ち着いて琴光喜をさば
きました。恐らく名古屋のファンの間では、この年一番のヒールになっ
た事でしょう。しかし稀勢の里はヒール役が合っているかも!?



琴光喜敗戦の後、東方三役揃い踏みであります。本来ならここからが
ボルテージの最高潮なのですが、この日は何だか、虚脱感に満ちた
ような空気になっていました。まだ厳密には望みはあるのですが・・・・。

西方より三役揃い踏み。千秋楽のハイライトの一つですが、
今回はぜんぜんきれいに写せませんでした(泣)。



最初は大関・琴欧洲に関脇・安馬の対戦。常々、「お客さんを喜ばす
相撲を取りたい。」と話している安馬ですが、この琴欧洲戦では、
何度か軽く変化を見せる立ち合いをした事もありました。

この日は、安馬は立ち合いはまともにいきましたが、それでも
琴欧洲に勝ちました。琴欧洲、土俵にバッタリ。安馬は負け越して
から4連勝で7勝8敗。三役を死守しました。この体で見事ですが、
それにつけても琴欧洲の影の薄さよ、と言いたくなるわけです。
注目筆頭の琴光喜とは対照的。この翌秋場所も、対上位戦が
一番も無かったにもかかわらず、7敗もしました。一体どうなってい
るんだ、コラ!と渇を入れてやりたいですね。先代師匠も泣くぞ。



ひいきの大関・千代大海です。この場所、3勝4敗となって、しかも
「過去3勝4敗で7日目を終わった場所は全て負け越している。」という
データが紹介された時は、本当に焦りました。しかし、そんなジンクス
も何のその。14日目には新横綱に土を付けて勝ち越し。気を楽に
しての今日、千秋楽の相手は、注目株の豊真将です。

仕切りを続ける両者。千代大海は、下を向いて足で土俵の砂を
『サーッサーッ』と履く、いつもの動作をしています。



豊真将をブン投げ、「どうじゃあ!」と右手を高く上げてファンに
アピールする千代大海・・・・・というのは嘘で、いつもの得意技で
豊真将をはたき落とした動きの流れで、千代大海の右手が一瞬、
上がった状態になったものです。豊真将は悔しそうに土俵に座り
込む。一方、これもある意味『サーカス相撲』と呼べやしないか?
と思えてくる逃げ足速しの千代大海は、9勝6敗となりました。

さあ、いよいよこの場所の結びの一番を迎えました。朝青龍−白鵬、
待ちわびた横綱同士の一番です。遂に東西横綱対決を観る事が
出来ました。私自身、生観戦では初。そして大相撲としても、平成14年
秋場所以来、実に3年ぶりの横綱対決でした。前回の時、新大関
だったのが、朝青龍です。やはり結びが東西の横綱というのは、場所
全体が引き締まっていいものですね。懸賞の垂れ幕も多数周って
います。そしてこれも優勝がかかる大一番。拡大版はこちら



まだまだ懸賞が周ります。横綱同士の一番。ところでこの時、館内
からはひたすら、白鵬コールが起こっていました。そりゃあ朝青龍は
ヒールだからって?いや、それだけではありません。これ、もし両者の
星勘定が逆だったとしたら、ファンは間違いなく朝青龍を応援していた
事でしょう。この一番で白鵬が勝てば、朝青龍は2敗となり、琴光喜と
優勝決定戦になるのです。そうなれば、また琴光喜に優勝の可能性が
復活する事になります。最も、琴光喜の対朝青龍戦成績を考えると、
果たして・・・・・?と言うところでしょうが。とにかく、もう一度琴光喜に
チャンスを。その一心で、ファンは白鵬を応援していたのです。

もう一度そんきょの場面を。これはもう時間一杯近くで、懸賞の
垂れ幕はもうありません。静寂の一瞬。拡大版はこちら



勝負はあっけなし。立ち合いから横綱の一方的な内容になりました。
過去何度か見られた、互角と互角で長く渡り合った名勝負とは対照的
でした。朝青龍がグイグイ前に出て、白鵬は既に片足が浮いています。
何より腰の位置が違いますよね。白鵬は完全に腰が伸びてしまってい
ます。これでは勝ち目ありません。新横綱のプレッシャーと闘い、前日で
優勝の望みも消え、白鵬はもう余力が無かったのかも知れません。
一方の朝青龍は、先場所のリベンジと、2場所連続優勝を持ってかれた
ライバル≠ノ、「今度こそ」の雪辱に燃えていました。かくて2日目
から14連勝で優勝。3場所ぶり21回目の優勝を決めました。そして
この瞬間、琴光喜の優勝の夢は完全に泡と消え、館内、改めてため息
またため息・・・・・。『黄色い垂れ幕』の応援団も、現実を目の当たりに
してすっかり沈んでいましたが、気を取り直したように、周りに対し、
「有難うございました。有難うございました。」とお礼を言い、周囲の
ファンから激励の言葉を返してもらっていました。そして、東の花道
付近の観客は、朝青龍が両手を挙げて引き上げると、
この時は祝福の拍手を送っていましたね。

平成19年名古屋場所も無事全ての取り組みを終え、男女ノ里
による弓取り式が行われました。



表彰式です。賜杯ならびに表彰状が、北の湖理事長より授与
されました。春場所の時と違い、デジカメのメモリーもしっかり残して
いたので、高ズームで撮りましたが、ブレて全然だめ・・・・・(涙)。

優勝旗の授与であります。放駒審判部長より、優勝旗を
受け取りました。こちらはまだマシな写りです。



内閣総理大臣杯の授与。まぶしくフラッシュが焚かれる中、
横綱はガッシリと受け止めます。

優勝インタビューです。しかしこれがまた聞こえない(苦笑)。
私の席は、インタビューの位置からちょうど対角線上。一番遠い
端っこになるため、ほとんど聞こえませんでした。「聞こえない!」
という声が、周りからも聞こえてきましたが、僅かに拾えた言葉は、
「負ける回数も増えてきて、これでは朝青龍らしくない。今場所は、
今までに経験した事のない経験をした。」というものです。確かに、
『3場所ぶり』の優勝というのは、21度目にして初のことでした。



表彰式を終え、朝青龍が意気揚々と引き上げていきます。
代わって土俵上には三賞のトロフィーが。これより三賞授賞式です。

まずは殊勲賞から。初日に朝青龍に土を付けた安美錦が受賞です。
当代最強力士に2連勝とは、本当に見事な記録の安美錦ですね。
そして土俵下では琴光喜が。そう、三賞はもちろん貰えますよね。
表彰のために姿を見せた時は、ファンはまた一斉に、今度は労いの
気持ちを込めた拍手を送っていました。先ほどの敗戦から数十分。
気持ちの整理もついたのか、琴光喜は何やら笑みを浮かべている
ように見えます。思えば、実質新入幕となった平成12年九州場所に、
いきなり三賞を総なめにしてから約7年、獲得した三賞は13回。この
場所は、敢闘・技能のダブル受賞で、大関への手土産としました。



敢闘賞はもう一人、新入幕で11番勝った豊響も受賞しました。
もっと馬力に磨きをかければ、将来上位で楽しみな存在です。

愛知県体育館の外に出ました。これから優勝パレードが始まります。
画面後方に、白いオープンカーが停まっているのが見えるでしょうか?
そしてその手前では、警備の親方衆が暫しの談笑をしていますが、
画面中央、髷を付けている親方こそは、夏場所前に引退した栃東
です。居合わせたファンはみな、「あ!栃東だ。栃東だよ。」
すっかり注目の的になっていた、栃東親方でした。



ファンはこぞって栃東親方の姿をカメラにパシャリ。私も思わず
一緒になってやりました(笑)。去る春場所10日目に、現役最後の
勝利を見たのが、つい昨日のようです。しかしこの画像、結構
アップになってしまって、ちょっと盗撮みたいって・・・・・(汗)?

いよいよ始まりました、優勝パレード。千秋楽観戦に来たからには、
この優勝パレードを見るのも大きな目的でした。大阪では2回見まし
たが、名古屋では初めてです。そして名古屋のパレードで何と言っても
嬉しいことは、ちょうど日が長い季節であるため、空がまだ明るく、
デジカメでの画像も撮りやすいし、もちろん全体にも見やすいという
ことです。この画像、オープンカーが来るのを待ってサッとシャッター
を押しましたが、ちょっとブレてますね。それに手前のパトカーが
ちょっと陰になった・・・・・(汗)。まあ、何とか収められました。



名古屋場所は、他の場所が赤い(そして多分日本車)のオープンカー
であるのに対して、白の外車のオープンカーが使われています。個人的
には、大きな力士が2人乗るのに、この、大き目の車の方が画的にも
合っていると思います。そして名古屋のパレードでは、他の場所で
優勝力士が左側、旗手が右側に乗るのに対し、逆になる事が
ありました。しかしこの時は、優勝力士が左になっていますね。それに
左右両側に人垣がいても、車はかなり左寄りに走っています。
恐らく、以前はもう少し真ん中をはしっていたから、優勝力士も右側に
乗っていたのではないでしょうか?この画像を撮影しながら、「次から
は、絶対に左側の人垣に加わろう。」と思いました。今回は何も知らず
に右側で待機しましたが、距離が遠くてまともに撮れなかった・・・・。


最後の1枚。朝青龍が左を向いて、ファンにあいさつをしています。
あの辺りで待ち構えるのもちょうどいいな、と思いました。そして
朝青龍、この時点では当然、秋場所も連覇をかけるものと思って
いましたよね。ところで、旗手を務めたのは、花篭部屋の光龍でした。
当然、朝赤龍だろうと予想していたファンも多く、何人かからは、
「何で光龍なの?一門も違うのに。」という疑問の声が飛んでいま
した。まあその辺り、人選の真相は謎ですが、優勝を決めた後、
旗手がどうやって決まるかも興味深いところですね。

 以上、平成19年大相撲名古屋場所、千秋楽のレポートでした。
 公開が10月の後半、もう九州場所の番付発表も近いという時期にまでずれ込んだことは、深くお詫び申し上げます。それでも、一度は公開中止を決めたことを思えば、前回公開レポで触れた、名古屋場所50周年写真展の画像をご提供いただき、そのお陰で無事にこうして、2回にわたるレポートを公開出来たことは、大変嬉しい限りです。ここまで作り終えて、改めて感謝の念に堪えません。
 名古屋の千秋楽は、初めての観戦でした。琴光喜の大一番に接し、また東西横綱決戦を記録出来たというのは大きな喜びとなりましたが、その後の朝青龍の一連の動きを聞くにつけ、この時の一番が、朝青龍の最初で最後の横綱同士対戦にならないことを、祈るばかりです。あの、名古屋城公園内の、広々としたスペース内での優勝パレードは、本当に良かったですね。
 相撲界は今、かなりの逆風期にありますが、今一度、『社会の中の相撲界』、独特の慣習・文化を持ちながらも、『プロスポーツとして開かれた存在』という視野も併せ持ち、国民に魅力を感じさせる大相撲に、なっていって欲しいと思います。


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